2007年05月15日

舞-Hime 第20話のこと その05

さて、続いて舞-Himeいきます



夜中、拓海の元へ走り出す舞
つまづき転んで、回想。
自分の不注意から、お母さんを死なせてしまった事を思い出す


ここの原画担当は、スタジオ九魔前田清明さんでした
レイアウトも芝居も非常に的確で、上手い方でした





余談ですが、スタジオ九魔には色々思い出があります

九魔自体に席を置いた事は無かったんですが、何度か九魔を通じて原画のアルバイトをしたことがありました

当時、僕はムッシュ・オニオン・プロダクションというスタジオに所属していて、通常はここから来る仕事を請けるしかないんですが、会社にナイショで、九魔の仕事を請けていたのです。


こういうのを昔は「アルバイト」と呼んでいました



ちょっと思い出してみると、勇者シリースの「エクスカイザー」の第01話(ジェットブーメランのとこ)とか、OVAガルフォースの何回目か・・とか、ジャンケンマン・・とか、色々やっていたように思います
当然スタッフクレジットには乗りません

当時は、というか今でも、事情があってスタッフクレジットに名前が出ない人は一杯いるのです



アルバイトの金額ですが、僕がオニオンで東映のテレビシリースの原画をやると、その当時で1カット1600円

最初、原画を始めた時は900円でしたから、それでも上がった方ですが、一ヶ月に100カットやっても16万にしかなりませんでした
(一ヶ月に、コンスタントに100以上やっていたんですが、これは結構頑張らないと、出来ないんですよ・・)
また、作監料も、一本10万円ぐらいだったと思います(9万だったかな・・)


それに比べて、九魔でやるサンライズのテレビシリースは、2500円出る!
OVAなら、4000円出る!
と聞いて、よだれを流して飛びついたというわけです(w



当時のムッシュ・オニオンのギャラは、業界内でも最底辺でしたから、その後辞めて、コクピットに移ってからは、普通に生活が出来るようになりました(w
(普通と言っても、アニメーターなので、どこまで普通と言っていいのか解らないんですが・・)






さて、話を戻して舞-Himeです

回想シーンでのちび拓海のたたずまい・・とか、川に流された時の波のうねり具合と溺れた感じ・・とか
地味ですが、非常に説得力の有る絵に仕上がりました

実は、こういうとこ、非常に大事なんです


こういうところが「ちゃち」だと、観客は舞の感情に、素直に納得してくれません
前田さんと作監の竹内さんの力です




その後、ヤタガラス登場
口から光線を吐き、地面を削って寮爆発
「ここは任せろ」となつきが舞を即すところまでが前田さんの担当です



さて、この、地面を削っていく光線がFOLLOWPANしていくカットですが、実はフリッカーという現象が起きています


フリッカーとは、FOLLOWPANをした時にやFOLLOWをした時に、背景のスライドが1コマ打ちなのに、セルの動きが2コマ打ちで、「ガクガク」とセルが戻って見える現象です

※PANとは、カメラが首を振る事。
FOLLOWPANとは、対象物を追いかけて(FOLLOWして)カメラが首を振る事です

又、元々のフリッカーとは、フィルムを映写した時、フィルムを回す歯車と、フィルムの横についている穴(パーフォレーションと言います)が合わず、ガチャガチャガクガクすることです

これを持ってきてアニメーションの現場では、ガクガクする動きをフリッカーと呼んでいます






FOLLOWPANでフリッカーが起き易いのは、移動するフレームの方向に対して、縞模様のような背景がある時
今回の林などが良い例ですね

また、移動するセルが、フレーム上で逆方向に動く時。
これはロボットが飛んで去って行く時などによく起こる現象です


さて、これを回避するにはセルのコマ数と、背景のスライドのコマ数を同じにしてやればいいわけですが、その引き幅の問題で、どうしても起こってしまう場合もあります

今回の場合、手前に逃げる舞となつきが別セルであって、ビームのコマ数とは、違うコマ数で動いていました
これを全部揃えようとすると、当初、想定した動きと変わってきてしまいます


どうしようか・・と思って、監督と相談した結果





「画面ブレを派手につけて、フリッカーそのものを誤魔化しちゃいましょう」

という結論に・・(w





画面ブレを「ガクガク」つけちゃえば、フリッカーが起きている事だって「演出意図だ」と開き直れてしまうんですね(w


こういう誤魔化しって、案外多いんですよね(w





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posted by にくきゅうファイター at 14:11| Comment(1) | TrackBack(1) | 舞-Hime | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
久々の更新ご苦労様です。
舞HIME20話は特に思い入れのある回なので、読んでいて本当に面白いです。

沼田さんのパートについては納得しましたw
20話の碧登場ところは、私程度の作画オタクでも沼田さんだと一発で分かる一方で、ちゃんと舞HIMEナイズされていて、オオッ!ディスプレイの前で声が出たものですw

前田清明さんはてっきりメカ絡みのところをやっていらっしゃるのだと思っていたので意外です。


余談ですが、一ヶ月ほど前に舞HIMEを見直していたら、
13話の最初の方で、チエさんがたまゆら祭について説明してる〜ハルカがリボンを取って捨てるカットのリボンに
「河本昇子」って書いてあったんですが……
河本昇……これは確信犯ですか?w
Posted by マット at 2007年05月16日 22:16
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